永楽帝ー華夷秩序の完成
上級者向けの本です。
第1章 中華という名の世界
第2章 大明帝国の誕生
第3章 皇統の行方
第4章 奪権への階梯
第5章 歴史の翻転
第6章 失われた時のなかで
第7章 天命の所在
第8章 クビライを超えて
第9章 華夷秩序の統べる者
第10章 永楽帝の遺産
元寇で知られたクビライ・ハンの元朝の末期から洪武帝による明の建国と統治、あまり知られていない2代目皇帝・建文帝の治世から、永楽帝の簒奪と政治を書いています。
まず、冒頭では中華世界の華夷秩序とは何かを説明しています。そして、元朝末期の政治情勢から大規模な反乱が起きて、洪武帝による中華征服が始まります。洪武帝の統治に関しては、四男の永楽帝がメインのこともあり、即位する前の永楽帝を含めた、各辺境に配置した藩王とその権力について重点を置いています。
建文帝に関してはあまり書かれていませんが、その治世のほとんどが永楽帝の反乱に割かれたからでしょう。それでも藩王の権力の削減と官僚制の改革についてささやかながら書かれています。
永楽帝の反乱、つまり靖難の変についてはある程度詳しく書かれています。ある程度と言ったのは、反乱を起こすまでの過程については詳しいのですが、実際に反乱を起こした後に関しては、それほど書かれていません。個人的にはそれが非常に残念です。この反乱は四年に渡り続きましたが、四年も戦うほどの長期戦になれば国力の大きい政権側が勝つのが普通です。特に国家が衰亡している訳ではない建国当初ならなおさらです。洪武帝の粛清で、建文帝側に将軍が不足していたというのが敗因とされていますが、四年も戦えば優れた将軍が育つものでしょう。一応政権側の敗因も記されていますが、あまり納得できません。それでも、反乱を起こすまでの緊迫した過程を読むのは面白いです。
その後の永楽帝の政治ですが、鄭和の大航海やモンゴル遠征・北京への遷都が主となっています。特に北京への遷都の過程が詳しいです。