周―理想化された古代王朝 (中公新書)
中級者向けの解説本です。
中国史に興味のある人向けです。
序章 新出資料から明らかになる周代の歴史
第1章 創業の時代ー西周前半期1
第3章 変わる礼制と政治体制ー西周後半期1
第4章 暴君と権臣たちー西周後半期2
第5章 周室既に卑しー春秋期
第6章 継承と変容
終章 祀と戎の行方ー戦国期以後
周王朝と聞いてもわからない人が多いでしょう。中国で2番目に古い国だと思っていただければ結構です。タイトルに「理想化された古代王朝」とありまして、後の時代になりますとこの時代は理想の国とされていました。孔子によって儒教が作られると、周王朝は理想化され、「40年に渡って刑罰がされることがなかった」とされています。ではその実情はどうだったのかを考察しています。
一口に周王朝と言いましても、当時の中国の支配者だった「西周」の時代と、ほとんど名目的な存在で黄河中流のごく小さな領土しか持たなかった「東周」とに分かれます。周王朝と言えば「西周」のことをいうのが一般的で、本書では主にこの「西周」を扱っています。しかし、本書の後半は「東周」についても書かれています。
私は中国史に詳しい方だと思っています。しかし、周王朝はあまり詳しくありませんでした。そもそも前代の殷王朝では発掘により記録が発見されていますが、周王朝は発掘される資料が少ないため、歴史書でしか残っていませんでした。しかも、前述したように、周王朝自体が理想化されていったため、実際はどんなだったのかがわかりにくくなっていました。
しかし、儀式などで使われた青銅器などに刻まれた文字などを考証していくことで、周王朝の実態が明らかになりつつあります。この本では、明らかになりつつある周王朝の実態を解説しています。
中公新書から出しているだけあって、中身が学術的な感じがします。正直言って一般人としてはかなり難しい内容だと思います。発掘した資料や歴史書を持ち出して考察をしていまして、よほど歴史に興味のある人でないと面白くないでしょう。
存在感のない「東周」時代についても書かれていることが地味に良いと感じました。この「東周」について書かれていることはあまりなかったので、逆に興味が湧いていたぐらいです。しかし、資料の少なさからあまり大したことは書かれていません。まあ武家政治の時の天皇家のようなものですから仕方ないでしょう。