科挙ー中国の試験地獄
中級者向けの歴史本です。
歴史の中でもマニアックな本で、中国史に特に興味のある人向けです。
昔の帝政時代の中国では、科挙という国家公務員試験がありました。この本では、科挙の成り立ちから、試験方法、採点方法、及第までどのくらい試験を受けなければいけなかったのか。試験を受ける際の苦労や言い伝え、合格者の社会的地位の変化などが述べられています。
前述の通りマニアックなテーマの本で興味のない人はとことん興味ないでしょう。しかし、中国史が特に好きでもっと知的好奇心を満足させたい人におすすめです。
科挙というのは、合格するとものすごく見返りが高いものです。権力を手に入れ、その職権で大金を築くことができます。その分くぐるには狭き門であり、倍率数千倍に達したとか。及第した人のエピソードにも感激する人がいるかもしれません。
しかし、科挙は10次試験ぐらいあって、その最底辺の子供向けの試験ですらおじさんの年齢になっても通らなかったという話もあります。中には科挙を及第した頃には白髪のお爺さんだったということも。そういう人生が失敗した人の悲劇的な話まで書かれています。
ただ、唯一の不満は、試験問題が全くと言っていいほど出て来ないということです。具体的にどのような問題が出されたのか、模範解答はなんと書かれたものなのか。時代ごとにどう変わっていったのかが、この本からではわかりません。他の本の話だと、今でいう小論文みたいなものだったようです。