金正日秘録
中級者向けの伝記です。
北朝鮮について興味のある人向けです。
第1章 不可解な「2つの死」
第2章 からいばりの少年
第3章 後継者への階段
第4章 工作機関の掌握と拉致
第5章 かすめ取った頂点
第6章 荒廃、そして核
第7章 未完の遺訓
金正日は2代目の北朝鮮の最高指導者です。ほとんど北朝鮮建国と同時期に誕生しました。幼少期はともかく成人になると、金日成の息子であることを土台にして権力の掌握に乗り出します。現在ではともかく当時の北朝鮮では世襲は当然と思われていませんでした。その世襲をするために金正日は様々な画策をします。金日成の神格化もその一巻で、父親を崇拝させることで自分自身をも崇拝させるように仕向けています。
序章はお飾りに祭り上げていた晩年の金日成との確執から入り、その後幼少期から成人まで、成人してから権力を徐々に掌握していく過程を記述しています。ほとんどが金正日の権力を固めていく過程について書かれています。
現在は北朝鮮の金正恩が注目を集めています。金正恩が最高指導者に就任した直後は宥和路線を歩むか、政権が崩壊するかと言われていました。しかし、蓋を開けると高官達を次々に粛清しています。ついには異母兄の暗殺まで暗殺しました。側から見ると異常に見えますが、金正日と比較するとおかしなことではありません。自分の父親と同じことを行なっているだけだということがわかります。
金正日も同じように軍や行政の高官たちを粛清して、自分の腹心たちを後釜に据えてきました。金正恩も同じようにして権力を掌握していることは間違いないでしょう。金正日体制が20年以上も続いたことを考えると、金正恩も一般に言われているよりはずっと長く続くかもしれません。金正恩にしても必死なはずです。「騎虎の勢い」という言葉がありまして(元ネタは隋の煬帝だったと思います。)、文字通り虎に騎った勢いで権力を握っているということです。この「虎に騎った」というのがみそでして、虎から降りる、つまり権力を失うとその虎に食い殺されてしまいます。ですから何が何でも権力を守らなければなりません。それはそれでちょっとだけ気の毒です。
金正日はわがままに育った御曹司だと思っている人も多いと思いますが、事実はそうでもありません。もちろん甘やかされて特別扱いされてきましたが、同時に金日成の弟を含む政敵と権力争いをして勝ち抜いてきた抜け目のない人間だということがわかります。ひねくれた性格は見た目通りで(笑)。
不満な点は私生活についても話がほとんど出てこないことです。副題にもあるように、現在の金正恩体制がなぜ崩壊しないのかを分析するための本ですから、あまり重要視しなかったのでしょう。 興味のある人は下記の「金正日の料理人」でも読んで見るといいでしょう。作者は平壌でラーメン店を開いた藤本健二さんです。