隋の煬帝
初級者向けの伝記です。
300ページもない薄い文庫本です。聖徳太子が遣隋使を派遣したと学校で習ったと思いますが、その遣「隋」使です。ただし、聖徳太子はほとんど出てきません。隋の前の南北朝時代が序盤となり、隋の建国者である煬帝の父、文帝から煬帝の最後まで書いています。
南北朝時代の皇帝というのはイカれた皇帝が数多く出現した時代です。イカれたというのは決して誇張ではありません。酔っぱらうたびに血を見ずにはいられない異常者や自ら剣を持って強盗する不良少年の皇帝は序の口で、自分の子孫に帝位を継承されたい一心で甥っ子達を粛清、ついにはその甥っ子に反乱を起こされ子孫を皆殺しにされる。そうかと思えば皇帝になったその甥っ子が先代と同じことをして、ついには国が滅ぶ始末。中国だけでなく、他の国でもおそらく例がないでしょう。
彼らのような狂人皇帝の最後を締めくくるのが煬帝です。と言っても悪人というより、見栄っ張りで臆病で強欲な人間と分析されています。宮殿が火事になったとき、反乱が起きたと思って草むらに隠れたという逸話があります。意外とお茶目なところがあって面白い。
煬帝とは別に陳の後主という皇帝にもこんな逸話がある。陳とは隋に最後まで敵対した国であるが、文化面ではよくても国力は圧倒的に低かった。しかし、この陳の後主はひたすら遊びまくったそうだ。危機的な状況になってきても、取り巻き連中のいう威勢のいいことを聞いて安心していたという。ところがいざというときになると、その取り巻き連中、一人残らず逃げ出して残ったのは冷遇されていた人間だけだったという。耳障りのいいことばかり言う人間というのはあてにならないということか。面白い話だったので、紹介しました。